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ヒッピーバンドに恋をして[安藤裕子]

●[人] 第二次安藤裕子ブーム

今、全く個人的に第二次「安藤裕子」ブームが到来している。二次ということは勿論一次があったわけだが、その前に私の中の安藤裕子へ至る経緯は「のうぜんかつら」が出る前、2LDKという堤幸彦の映画のED「隣人に光が射すとき」を担当していた頃に、私の彼女がとても良いと教えてくれたにも関わらず興味を素通りしてしまったという経緯がある。しかしその後「月桂冠のCM」でブレイクした時になんなくハマった(彼女はブレイクしたからもう興味がなくなったらしい)。しかもブレイク前の「サリー」という曲で。少しは人の話を聞けと思うが、ハマるというのは全く個人的に加えて妙なタイミングで訪れる。往々にしてそれは自らが自らのポイントを発見したときであり、強く勧められるとさっと通り過ぎてしまう。
第一次ブームはこの人の作る世界はエロいと感じた時に訪れた。エロいというのは直情的な意味じゃなくて、言うならば誘い受けのようなエロさ。そこには意地汚さや狡猾さなど、色で言うならば深緑みたいなあまりよろしくない感情をまとっているように見えた。アンニュイな女の子に目がない私は、病的な世界を持つこの人が気になって仕方なかった。安藤裕子は元々映画監督志望であり、池袋ウエストゲートパークでシュンの彼女(ボーリングのねえちゃん)役をやっていたことからも音楽の畑の人ではなかった。だから映像で見せるのに長けているのかもしれない。「サリー」はその色が遺憾なく発揮されている。PVの演出は堤監督なのだが、安藤裕子のカラーが滲んでいる。

【サリー】

実はあまりに好きで、その後ライブまで行ってしまった。そのライブはとても良かったのだが、かなり単調でスタンディングで見るものじゃないなと思った。目の前にいる本人は年相応で、映像で見るのとはまた違った印象を受けた。でも、病的だった。これは変わらなかった。
そして第二次に至る。

六月に「chronicle.」という3rdアルバムが発売された。そこに収録されている「HAPPY」という曲がやたらとよくて、しかもPVが曲を上回るくらいの内容でちょっとちょっとまて、これはすさまじいぞ、と気づいた時すでに遅し。曲を作ったのはSUEMITSU & THE SUEMITHで、もろビートルズな曲調が多幸感を引き起こす。三十路の人間にこういう表現はいかがかと思うけど、正直「かわいい」。

【HAPPY】

もう一曲「パラレル」も同じくらい魅力的で、このPVが今までのような凝ったつくりではなくただ安藤裕子が歌う。ひたすらに歌う。しかし、そぎ落としまくったその画はものすごい病的にみえる。表情が多彩なはずなのに、根底にある感情の軸が恐ろしく重い。だからか本人は躍動感を表現したかったようだが、とにかく病的。安藤裕子は速く動くと一見してコンテンポラリーダンスのような不可解な動きをする、ということを発見できた優秀なPV。

【パラレル】