「DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?」

私の場合、見事にヲタの思入れフィルターで補正されているだろうが、むしろAKBを知らない人が見た方が面白いと思う。すべからくトップに立つ若者達の覚悟に圧倒されるだろう。夢と心中する覚悟の若者たちに。若者はなんにも考えていないなぞ誰がいったのでしょう。考え過ぎて考え抜いて、アイドルなのにもはやすっぴんだろうが関係なくなるほどに。


この映画を選抜メンバーのみがインタビューをうけて、それ以外のメンバーはほぼ映らないつまらないドキュメント。と嘆くだけではあまりに惜しいと思う。

作品はインタビューを紡ぐ形式で進むが、登場するメンバーは個人ではなくやはりAKBの分身として描かれていたように思う。彼女たちはAKBの世界への語り部、行き先案内人として登場する。個別インタビューに選抜された15名は努力を実らせて、しかも選ばれた人達。それは同時に、選抜の真裏に、選ばれなかった何百の少女達が同じように悩み苦しんでいることを想起させる程度の、あくまでサンプルとしての15人だった。誰がどんなふうに、というのはあまり色濃くない。正直インタビューよりも、その間に挟まる舞台裏の方が尺は短いが、インパクトがある。それが本編。言ってしまえばチーム編成の話が中心で、その他は色々割愛されている。とにかく<劇場>にこだわって作られていた。そこにはメディアには取り上げられないが、何より「一番知ってほしい場所」という願いが透けていた。それでもいいなぁと思ってしまったのはやはり当事者であるメンバーの口からAKBが語られているからだと思う。他の誰でもないメンバー自身の口から。

それとこの1年間ずーっとカメラが入っていたことは大きい。カメラというのは第三者の役割を成す。見られることで意識する。昔に見たひきこもりの兄を部屋から出すためにカメラで兄を撮り続けた弟の映像作品を思いだした。カメラは時に言葉より雄弁。カメラが彼女たちの毎日に、人に見せる故の本気を引きづり出す役割を付け加えていたのなら、2010年の快進撃は“必然”なのかもしれないとさえ思った。

メンバーで印象に残ったところは、なにより篠田麻里子さんだ。ファッションについての話に思考がつまっていて素敵だった。メンバーや、自分のポジションについても他とは違った観点を持とうとする歳年長だからこその立場。目の前しか見えなくなってしまう青春とは少しちがうものを持っている。そこを通り越したすこし先を走ってる。彼女が尊敬されるというのは本当にこんなに短くてもよく分かる。茶目っ気のある大人は簡単につくられているものじゃない。

みぃちゃんは素敵な名言を吐いていた。かっこいいな。と思った。そして横山・篠田ラインはあつすぎる。あつみな、こじゆう、ゆきさえとか主要ライン全部あった。しーちゃんは映る度ににぎやかしていてそれも素敵だった。あみなちゃんの一言にしびれた。などなど。それは監督が感覚を残して編集したとパンフレットでも言っていた通り、瑣末なようにみえてその人の核を表す部分を残したからだと思う。さあ今度はあなたが発見する番です。


監督が女性であるなぁと思い、制作総指揮の岩井俊二の存在を強く確認したカットがいくつかあった。それは冒頭のシーンとエンドロール。詳しくはネタバレになるので割愛するが、そのカットを重要視していることは間違いなかった。“生きている”そして“関わっている”ことを強く意識するカット。彼女たちはアイドル。だからこそ毎日を生きている人間の“証”がそのまま生身で映し出されている。あれだけでも、すごくいとしい。

基本的にDDな私にはなんでもうつくしい!と思ってしまう節があるけれど、それでもやっぱり推しだから気になってしまうことがどうしてもある。


北原里英さんである。
彼女のカットだけ、異質。それは他のメンバーは淡くひかりでとばしたような映像なのに比べて、北原さんのシーンは濃くはっきりしている。そして雨が降っている。なにより衝撃だったのが、彼女は岩井作品のモチーフである<赤い傘>を持たされていた。そこだけ何故か切り取ったように映画なのである。ドキュメンタリーの中で彼女だけフィクションとして描かれているかのようだった。桜がうつくしい「四月物語」の印象的なカット。そして庵野秀明がとった岩井俊二主演の「式日」。ともに赤い傘が登場する。なんだかもう見方によってはあざといのだろうが、どうでもいい。北原さんは本当に岩井俊二に愛されていると思った。たまらなくいとおしい。



刺激を求めてやまないヲタには退屈かもしれないが、女の子が好きで好きでやまない人には、淡い映像とやわらかい音楽の中で、かわいい女の子が逡巡しながらもひとつ、決意の目で喋っている姿がもう至福のひとときで内蔵破裂もの。おすすめです。



「DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?」
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