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「ウルトラマンサーガ」 ※ネタバレあり

ウルトラマンサーガ
http://www.ultramansaga.com/

まず私はウルトラマンに詳しくない。特撮ヒーローものもライダーを少し。それもクウガと電王ぐらいしかみたことない。ウルトラマンは一作品もみたことない。だからウルトラマンダイナことアスカ隊員(つるの剛士)が一体どんな功績の持ち主なのか、どんな位置づけなのか知らなかった。それでも楽しめる。それがウルトラマン


ヒーローには自らの強い意志と使命感からなる自己実現型ヒーローと、自分の意志とは関係なく不本意なかたちでヒーローになってしまう雇われヒーローがいる。後者は半ば頑なに抵抗を続ける。ヒーローになるなんてごたいそうなこと自分にはできない、何かに熱くなりきれない若者像が投影されたキャラ(=アムロレイ→碇シンジレントンなどなど続く…)で、最初から頼れる存在というよりは、主人公の成長を通して学ぶというようなタイプ。今回のサーガではそのキャラにさらに狂キャラのエッセンスが加わった隊員をDAIGOが演じているのだけど、ぴったり過ぎる。なにせ暗くならない。彼、なんて二次元的なのだろう。細身に高い声。ウィッシュをそのままにポジティブな言動と笑えない家柄。まず、熱血以外のアプローチをする彼みたいなヒーローはなんだかんだ気になってしまう。


あらすじとしては
いつの間にか人が消えてしまった地球で、残された子供たちを怪獣の侵略から守ろうとたたかう女性だけの地球防衛隊・チームUの前に、時空を超えてウルトラマンがやってきて、明日のためにドンパチかまします。詳しくはHPへ。


以下ネタバレを含みますので注意








アンナ役の秋元才加さんは冒頭の地球防衛隊の制服を着用するシーンから息を飲む。体が凄い。どうして今までこの完璧な肉体を特撮へドロップしなかったのか少々不自然にさえ思うほど、隊員スーツに包まれた逆三角の肉体それは、秋元さんを知らない人からみれば、きっと役作りに見えるだろう。デジタル映像の大画面で光る肉体は単純に美しくかっこいい。もちろんチームUを率いる姿は勇ましく、また惨事を目の前に何もできない歯がゆさにたびたび引っ掛かるように立ち留まる姿に共感する。それが端々から伝わるので自然と入れ込んでしまう。見事に主要キャラを演じきっていておそれいった。怪人に街をめちゃくちゃにされた時に叫ぶアンナの「どうしてこんなことに!」の一声はまさにチームU及びあの世界へ感情移入する鶴の一声だった。もう秋元さんの苦悩をみているだけでなんでこんな地球になってしまったんだ!の感情が呼び起こされる。そう。なんでこんな地球になってしまったんだ。


未曾有の大惨事の影響がもちろんある。それは誰も人が死なないことだと思った。私は他のウルトラマンシリーズをみていないから確証がもてないが、地球防衛隊と何人かの子供たち以外の人間がすべてどこかへ消えてしまった地球が舞台。だから怪獣とウルトラマンがどんなに暴れても誰ひとり命を落とさない。それは徹頭徹尾の守り事だったと思う。だけどその世界はちょっと不気味でもある。誰もいないがれきで満ちた世界。スーパーで食料をお借りしてキャンプで暮らす毎日。それはもうSFの世界じゃない。すぐそばにある現実だと思い起こされる。


アンナをはじめ、後に分かる出自からも荒くれ者が多いチームUで今にも喧嘩が始まりそうな中、アンナの妹リーサ役の佐藤すみれちゃんに何度も癒された。リーサは看護担当で戦闘員とは物腰から違う。今までなんで気付かなかったのかわからないけれど、すみれちゃん独特の発声が戦隊シリーズにすこーんとハマっている。最初のカットから、この子には何かあるんだなと思うほどに強い目をしている。そういう内省的な役回りはすみれちゃんにぴったりだと思った。クラシックギター片手に凛とした歌声を響かせるシーン。本当は支えとして歌った歌だったけど、すみれちゃんの歌声はそれ自体が鎮魂歌の役割になっていたように思えた。リーサが可憐でありながら、ここぞと言う時に誰より強さを発揮する姿を次々に伺うことができ、どんどん好きになる。アンナのピンチに妹であるリーサが「私達がいなくなったら子供たちはどうするのよ!」と叫ぶところにはぐっときた。それはアンナが「どうしてこんなことに!」と叫んだあのシーンとも重ならなくはなかった。そう。子供たちはどうするのだ。

子供といえば、ヒナ役のしまちゃんは一人だけふわふわのスカートを履いている通信担当なんだけど、基本子供たちと共にいるため、母性がにじんでいた。知らない人がみれば、声のかわいいしまちゃんはそういう子に映ったかもしれない。ノンコ役のゆったんが途中「わーわーわめくな!」みたいに言うところがあるんだけど、声が高くてでかくて乙女なしまちゃんにぴったりだった。演技はまだまだだけど、子供たちをあやしてたくさん連れているところと爆発で汚れてしまったくまさんのぬいぐるみを必死に拭いているところはちょっと胸がきゅんきゅん痛くなったよ。まっすぐで不器用な感情がよく役に出ていた。それから、いやーんなショット(お約束?)にほくそえんだ。


チームUやキャンプにいる子どもたちはアスカ隊員のことをどうしても忘れられない。いきていると信じている。それがたとえ目の前で消えてしまったとしても。その願いみたいなものが食卓にぶちまけられた時に一番ひやっとする。食卓というのは平和や家族やチームやあたたかさや営みの象徴で、だからこそ欠損を思い出しやすい場所。そういうことが無数にあったのだろうな。アスカ隊員は家族みたいな存在だったんだなと一発で分かる。あのシーンが物語を深くしているような気がする。好きだ。


物語の中核。タイガ隊員はトラウマがフラッシュバックして逃げ出したり最後の最後までウルトラマンとして戦うことに抵抗を続ける。そのタイガ隊員が決意するひとつの山場なシーンをサワ役の佐江ちゃんとノンコ役のゆったんが任されるここもぐっときた。2人が過去をずるずるとひっぱりだす空気に引き寄せられる。人はその都度何かの役割を演じて生きている。アイドル。先生。親。子供。兄。妹。部長。先輩。若者。そんなことをふと思い出す。

というかサワとノンコすごくいい。掛け合い漫才みたいなところ。短い時間で最大のキャラの厚みを出していた。とくにノンコのキャラは重宝されてしかるべきで、あの欠かせない感はきっとどっかからオファーかかるよゆったん!


3人のウルトラマンで驚いたのは和平交渉をするウルトラマンコスモス=ムサシ隊員(杉浦太陽)だ。コスモスがぴろぴろぴろ〜とビームを出すと、暴れていた怪人達は大人しくなって引き返していく。ムサシ隊員は「少し興奮していただけで倒す必要のない怪獣だよ」そんなことを言う。彼が生きる星では怪獣と人間が共存して生きているという話まで出てくる。敵と味方。黒と白。それだけでせかいが成り立たないことは子供にもお見通しなのかなと、そんな多様な形をウルトラマンにて知る。それら全てのテンポを絶妙につかさどるのがウルトラマンゼロ。タイガ隊員と合体したゼロの声を担当していたのはなんとマモキュンこと宮野真守さん。彼の功績は大きいはず。それだけでも楽しめる。


最後のシーン。「俺はこの世界の未来が見てみたいんだ」と地球に残り生きていくと決めたタイガ隊員によって話を美談に終わらせなかったところがすごいなと思った。突然やってきて任務が終わったらさよならしてしまうわけではない。海岸沿いを車で走るタイガ隊員たちの引きの映像は、日常が続くことをもの語っていた。海はとてもきれい。


おもしろい作品はみんなしあわせになれると改めて思った。
しまちゃん。いい事務所に入ったね。おめでとう。なんだかとっても嬉しかったよ。