「DOCUMENTARY of AKB48 The time has come〜少女たちは、今、その背中に何を想う?〜」※ネタバレ注意※

以下、感想。



AKBには愉快で他人への思いやりを忘れない子が何人もいると思い出させてくれた。
時にそれが自分より相手を優先させることになっても。それはまさしく優子ちゃんが主役の本作に相応しいテイストだと思った。



だからこそ、戦場は続く。
優子ちゃんやたかみなが守った戦場を続けなければならない、のだろうか。



















※ネタバレ注意※













まず、指原やみぃちゃんのこと、HKTやチーム4のところは正直観たかったし
篠田さん秋元さんの卒業が残してくれたものを観たかった気もするけど、まるっと入っていない。
スペシャルサンクスで名前入っている)
主軸は優子ちゃんの卒業と、震災。



優子ちゃんのいくつかの言葉が本作の主題のすべてだった。



命綱なしで高いゴンドラに乗る時
「落ちたら落ちたでいい。その気持ちでいる」



高橋監督にロケバスの中でインタビューされた時
「いつからか仲間のためにAKBをやっている。その変化に気付いてしまった。」




私は優子ちゃんのことばを聞いて「誰かのために」という合言葉を意識した。それは震災後に生まれたAKBグループ被災地支援プロジェクトの、名称。そうして今作もまた震災ドキュメンタリーとして物語が続いていることに「安堵」と「不安」を同時に覚える。「安堵」と「不安」の正体は、毎月の被災地訪問を続け、震災を忘れることなく支援し続けた積み重ねと同時に、その比重がみるみるうちに肥大化して、AKBが「夢を叶える自己実現のグループ」から、「誰かのための社会団体」としての役割が強くなっていった気がするからだと思う。そしてそのことを優子ちゃんも、たかみなも、十二分にわかってしまっていること。また残りの2期メンである佐江ちゃん、梅ちゃん、かなも気づき迷い始めていること。総選挙でのスピーチでも、小嶋さんが明るく冗談のように場を和ませるんだけども、彼女のようなひともまた卒業発表を先延ばしにするような選択を取らざるおえないことに、AKBの「現在」を意識させられた。戦場が続いている。






■誰かのためのAKB


高橋栄樹監督がよくみてきた世代(感覚としては〜2012くらい)、運命をまたぐ震災世代、前田敦子を知らない次世代。
AKBの活動を通して伝えたいこと、表現したい「自分」が一人一人にある。
もしかしたら新しいメンバーたちは自己実現より、誰かのために何かをしたい比重へと傾いてきているのかもしれないとさえ思った。



冒頭、青森から状況するドラフト生にその予感は重なる。少し前に初期メンが危機感を感じていた「AKBになりたくて入ってくる子」問題は肥大化、AKBの規模も大きくなり、被災地支援という大きな命題、2期メンまでの高橋小嶋峯岸、大島梅田小林宮澤がそのサポートに周り、その姿は彼女たちが最初に入ったときの自己実現とは遠くなっていくような、妙な心のざわつきを覚えた。優子ちゃん卒コンの開催が悪天候で危ぶまれた時に、舞台特攻か何かが使えず、それを使わずにそのままコンサートをすることができるのかというスタッフとのやり取りの中でも、「野音とは違うからね、それじゃ納得しないよね、AKBは大きすぎる」というようなことばを、優子ちゃんがリアルに発言する。



卒コンはリハを決行するものの結局、大雨で中止となる。卒コンを中心に構成を考えていたはずの映像素材が今作では圧倒的に少ない。その意味で優子ちゃんが濃く描かれることはない。でもそれは冒頭に優子ちゃんの口から語られた「自分のため」から「仲間のために」AKBをやっていく意味の変化と何処かで重なり、結果的に皮肉なつくりになる。一方で、学校で書いた卒業文集を公開したのは、優子ちゃんと同じチームKに入ったドラフト生だったと思うが、彼女の目指すアイドル像はぴったりと現在の社会奉仕的なAKBの活動にマッチしていた。



どのシーンだったか忘れてしまったが、優子ちゃんが自分を「器用貧乏だ」と言うのをしっかりキャッチアップしたのは高橋監督だからこそだと思う。私はその時、大声ダイヤモンドで主要メンに与えられるブレザーではなく、ただの白シャツを着ていた優子ちゃんのことをそっと思い出す。優子ちゃんは月を照らし続けた太陽だと私はいまでも感じているけれど、何もしなくてもそうなのではなく、他の人とは桁違いのサービス精神でもってそうしてくれているのかなと思っている。日を改めた優子ちゃんのコンサートは少しシンプルなようにみえたけれど、晴天で小細工が無くて優子ちゃんが笑ってて、その方が全然良い感じがした。ハワイみたいな開放的な土地で優子ちゃんの決意を撮ってるのも痛々しさがなくて好き。見終えた後、どこか今までのシリーズと違ってすっきりしたものがあった。それは優子ちゃんの明るさをたいせつにして、そういったことをふまえての大島優子がひとりの人間に戻るラストシーンがあったからかもしれない。これからの爽やかで晴れやかであるシンプルな未来を想像できて、優子ちゃんかっこよかった。






■谷間の世代7期生のこと


心に残ったのは、7期生のことだった。
このタイミングで谷間の世代と呼ばれる7期に視点を置いた高橋栄樹監督はどこまでもAKBの良心だと思った。チームKの曲名を借りれば、AKBを「スクラップ&ビルド」している人は彼に他ならない。現在48グループに残る7期生。指原・北原(当時はみゃおがホープ)を筆頭とした5期と最短期間で昇格を果たしたあきちゃを筆頭とした6期、全員首を切られてしまう暗黒の8期と、最初からメディアにバンバン放り込まれた次世代9期に挟まれた谷間の世代である。自らを谷間の世代と言ってやらないと気が済まないくらいの谷間の世代である。今回すーちゃんとあやりんは組閣で移籍を言い渡された。



驚いた。組閣でSKE移籍が決まったすーちゃん(佐藤すみれ)の振舞いがなんとも美しい存在感をもってスクリーンを満たしていたから。彼女が根っこで持つ芯の強さときらめきが映画の画として力をもてあましていた。すーちゃんとかれんちゃんの楽屋でのシーンは濃密で、私には2人がなにより美しい関係にうつった。ドラフトで選抜された田北さん達とすーちゃん達との対比も抜群だと思った。すーちゃんが移籍することに対してかれんちゃんを説得しようと放った、「研修生と同じくらい未来があるんだよ。ていうか同じだよ。」という意味合いの素晴らしさを忘れない。まるで自分に言い聞かせているみたいに力強かった。



それから今作の癒しパート。かつてドキュメンタリーシリーズで癒しの存在を全うしたのは地方組だった。その地方組が愛してやまないみんなの妹、あーみん(前田亜美)の姿を、要所で同じ役割としてカメラが捉えているのが、何だが高橋監督っぽくて、ニクいとさえ思う。私はこの映画を万人に勧めない。でも、全盛期に嵌り、何らかの理由でグループと距離を置いてしまった方(私自身がそうです)、そうでなくとも、あーみん、すーちゃんを初めとした7期に思い入れがある人。東北出身者として目線を保ち持ち続けるかれんちゃんにピンときたなら、観て欲しいと思う。




■その他の気になったシーン


岡田奈々ちゃん内山菜月ちゃんのパートは歪んだ私には今ドキっぽすぎた。みおりんのメリーゴーランドは癒されるし、麻友と生駒ちゃんの蜜月や、指原支配人のハーレム生活、声がでかすぎる島田を含めたチームKの雰囲気、十夢ちゃんのここぞって時のギャップも同性を惑わす魅力にあふれていた。それまで気丈に振る舞うもEVが閉まって滝のように涙が止まらない松井玲奈ちゃんも忘れられない。国立が雨で中止になった時、何も言わないけれど優子ちゃんの傍にいる小嶋さん。ハワイで優子ちゃんのインタビューにはさまるイケイケグラサンの小嶋さん。優子ちゃん卒コンの時ひとりだけ超速ハイタッチのぱるる。お弁当を床で食べる北原さん、あきちゃ、梅ちゃん。リクアワ「支え」の詰め込み(笑)。エンドロールにSONEがうつってちょっと泣いた。残酷ショーはチーム4組閣の高島さん。唯一握手したことのある13期生だけにつらかった。




見ている人は見ている。
高橋監督のドキュメンタリーにかける命がみえるから私はこのシリーズがある限り、AKBが嫌になっても見続けると思う。