AKBがいっぱい2011をみて

先月のいつだったか私は、もう大丈夫だ。せつなさよりもきらめきが勝った。なんかこれは色々いけそうだぞ。というようなことをじわじわと思った。2011年の夏、チームごとに行われた「AKBがいっぱい〜Summer tour〜」の映像、チーム4が結成されてから初のライブとなるツアー。その最終日米子公演のDVD映像を観ていて咀嚼するように思ったことだった。


当然だけど、ライブ映像には脱退する前の森杏奈ちゃんがいた。なんだか気付かないうちに緊張してこわばっていた私はその映像をみて一気に脱力した。チーム4チーム4とうるさいほど口にしてきて、どこかで引っ掛かり続けていた事。チーム4がAKB48に出来た4つ目の新チームとして言い渡されてから、森杏奈ちゃんがいる全員揃ってのチーム4の、形という形をみていなかったこと。だから鹿児島と米子の映像は私にとって初めてチーム4と出会ったみたいに感じた。これがチーム4“だった”んだ。私は遠征もしなかったぬるいファンだけど、そんなぬるいヲタにもこの映像を残してくれたのは有難いことだと思った。


9期の中でも初期から推されていた彼女のポジションは全体曲でも決して悪くない。9期を追っかけてない人でもなんちゃんがセンターを務めたヘビロテは何かと目にすることも多い曲だし、研究生時代に与えられたチーム研究生曲の「フルーツ・スノウ(チャンスの順番c/w)」や「アンチ(Everyday、カチューシャc/w)」、2010年に収録したであろう「Hight school days」ではフロントメンバ―を務めている。当然ながらカメラは全てのメンバーを均等に映しはしない。だからこそ「推しカメラ」というまるまる一曲その子だけを追いかけたスペシャル特典が生まれたりもする。2010年度ツアーDVDBOX特典に続き、今年のツアーDVDBOX特典にもメンバーの人数分収録されている。手腕を問わず、カメラを扱うのが人である限り、カメラの抜きは多かれ少なかれ、そこを瞬間として押さえたくなる(または編集として残したくなる)得も言われぬ力が作用しているのだと思う。だから、脱退者である森杏奈ちゃんの「推しカメラ」がなくても、本編カメラでの抜きの多さは、揺ぎ無く彼女がチーム4の一員であった証だった。留めたい瞬間の連続があって、大輪の笑顔が何度も何度も映る。それは輝きのてっぺんを向いてた。


ステージで楽しそうに何曲も踊るなんちゃんの新しい映像をたくさんみたのが久しぶりだったので、初めて観た時ははっきり言ってそれはもうハイだった。脳内から楽しい周波が沢山出ていてにやにやにやにや顔が緩みっぱなしになる。怪我でリバイバル公演に出られず、その分の「僕の太陽」公演曲も含めレッスンをこなしたなんちゃんは、確かにフリも完璧には入ってなくちょいちょい抜けていたりする。怪我の大事をとる休演と穴をあけないプロとしての出演を天秤にかけたら間違いなく後者の優先に軍配があがるんだろう。フリ抜けでステージに立つのは不十分なのかもしれない。だけどその出で立ちというか、舞台に立つ“サマ”みたいなのは、どうみてもステージに立つオーラに満ち満ちていた。なんだかそういう眩しさに当てられちゃって、まんまと消えてしまいそうになった。久しぶりに立ったステージに足が震えるなんちゃん。腰の爆弾で今にもタイムアウトしそうだとかそういう正味な現実話。動かすことのできない今今の話。そうだったんだっけ。本当に?なんちゃんが立つステージにぎこちなさのかけらも感じない。なんちゃんは悪気もなくかっこよくって泣けてくる。


本人そのもののステージもさることながら、メンバーと交わす温かいアイコンタクトをたくさんみたのも久しぶりだったので面食らった。「僕の太陽」でなぁなと「僕が探す」と笑顔で指差し合うところも、「High school days」終わりに鈴蘭と鼻をつけあわすことも、「ヘビロテ」で背の低いいずりなや大場さんに合せてスタンドマイクをこっそり下げてやることも、「Everyday、カチューシャ」でぱるるに背中を愛らしく叩かれてやることも、そこにチーム4の中のなんちゃんがいた。いるじゃん。いるいる。超いるんだよ。そこらじゅうにいる。


果ては、米子公演の「誰かのために」を観てしまうだけでもう十分よかったのかもしれない。歌に入る前、3月に起きた震災について美宥ちゃんから口上がある。歌に入ると階段の一番高いとこでぱるるのあんな険しい表情を初めてみた。ちょびっとだけ隣を気遣うしまちゃんがいる。まっすぐ前を向いたなんちゃんの頬に光の道ができる。鈴蘭は明るい。ともすれば火を絶やさないように必死に燃えている。階段を降り、メンバーが一列に並ぶと、ゆっくりと胸に置かれたてのひらは先頭のぱるるから紡がれやがて最後のなんちゃんで花咲く。

「誰かのために 人は生きてる 私に何が できるのでしょう」

そんなに何かを思いつめることはなかったんじゃないかと、軽々しく口にするのは酷いのかもしれない。でもこんなの必死こいて誰かのために生きていなくとも、別に不都合のない世の中じゃなきゃおかしくなっちゃうよ、って今も思う。アイドルの貴方達が自分の無力さを感じる必要なんてなくて、ただなんとなくあなたに笑っていて欲しかった。どこまでも青天井に笑っていてほしかった。片一方で感じやすいハートにつめこむだけつめこんだあの子達が圧倒的にまぶしく美しい。そう思う気持ちと一緒に、自分の出来心の願いが沸いては消える。押しつけがましい言い訳はこの際放りだしてあなたには最高の笑顔で嘘ついていて欲しかった。

歌終わり短くも気持ちを締める永尾さん。永尾さんのことばは時々誰よりもみんなの気持ちをすんなりまとめるんだなと思う。今度もそれだった。続く曲はおじゃる丸シスターズの「初恋は実らない」。この曲はタイアップ紐付きだけれど研究生が歌っている曲でAKBとは別にCDが発売されたちょっとしたユニット扱いを受けた楽曲だった。当時モバメで9期のみんな喜んでいたなぁと思いながら、かわいい振り付けに、また気持ちが青くなる。“相手がどうであろうとも自分が好きなら続くんだ”恵まれてる恵まれてると言われたなんやらわからん時期に加入したチーム4メンの活動のことみたいと思う。“せつなくすっぱいまだ青い果実”たちが自分に何ができるかわからなくても、今やってることが好きだと思い続けられるなら、もう実らなくても走って行ったらいいと思った。道はひとつじゃない。それを理解することも道だと教えられてしまう。

公演をさいごまで観終わって、妙に納得した。かっこかわいすぎるなんちゃんが喪失を埋めた。これでもう胸がネガティブに痛むことはないはずだと思った。


それが急加速するグループの動向に比例してボロボロとだめになっていく。最近のAKBの活動を追っていった時どれにもあと少し待っていればの気持ちが膨らむばかりになった。なんちゃんが高校の軽音部でやってると言ってたキーボード姿がずっとみてみたかった。部活動――由依ちゃんとまた一緒に音楽をできたかもしれない。モバメのおもしろい子だったから、Google+もそれなりにヒットしたのかもしれない。CMに出ればそれだけ映える容姿の人だと思ってやまない。あなたのかっこよさとかわいさは多分もっと色んな人を魅了した。MV。コント。ドラマ。雑誌。写真集。演劇科の志はアイドル業で試されぬまま眠った。今後地震があっても彼女の無事を当人から知ることはない。この未練と嫉妬に泥まみれな感情を抑えられない限り活動を追って行けない。言葉にしては差し支えると思うことが積もりすぎて、書いては消すことも多くなりました。チーム4をみている中でこれが発生し始めたらガンだ。以上の理由からAKBから少し離れることに決めました。