武藤彩未 ライブハウスツアー2013 「TRAVELING ALONE」〜はじめての旅は彩の国〜成功させたい!!天使のウィンク〜@西川口ハーツ

武藤彩未ちゃんは聖子ちゃんが好きな17歳。演目自体も80年代のアイドル歌謡を歌うコンセプト。この日のセトリには聖子ちゃんメドレーがあった。それが本当に素晴らしくて、現代に80年代を蘇らせる姿は勇ましく挑戦的でもあった。真っ白なドレスを纏うその少女から届く歌には真っ白な気持ちが乗っていた。美しかった。


出囃子がおもしろい。ナウシカ王蟲を呼ぶあの歌のアレンジに明滅する色とりどりのライト。何がはじまるんだろう…というワクワク感の演出がついている。小規模だっていかようにもなるんだよ、と言われた気がした。冒頭にオリジナルを2曲歌っていたけれど、それが終演後にセトリ確認するまでオリジナルとは気づかないほど、私の知らない80年代の名曲にすっかり昇華されていた。完成度高い…純粋にそう思った。それでも大名曲の昭和アイドル歌謡のカバーを挟んで、ラストにもう一度そのオリジナルを歌うと、どこか違って聞こえてきたりする。それが不思議と初めよりずっと生き生きして聞こえる。この試みにすっかり魅了されることになる。キャパ300くらいのライブハウスでも彼女は徹頭徹尾に清廉で、アイドルの要素でもある心理的な距離として「近い」のに「遠い」を体現していた。彼女の歌声は羽根です。


聖子ちゃん「風立ちぬ」の
「さよなら」と3度続くところには今では少ない独特の歌謡曲の色気がある。


浅香唯「セシル」の歌詞にある「今夜私がそれになれればいいのに」には、
彼女自身がそれにはなれないことを十分、分かっていて歌っている気がして、ものすごく切なくて身が引き裂かれそうだった。

それは近くて遠い、の正体なのかもしれない。たったひとりで、歌と踊り以外に、MCも、歌入りのきっかけも、煽りも「恒例の…彩未エクササイズの時間ですよ」といって客席に振り付け指導までする彩未ちゃん。まいにゃを観たときにも思ったけど、舞台を成立させるのって、とても難しいことだと思う。それを高校生の彼女がたった一人で、集中力と切り替えを使い分け、本人の空気を絶やすこともなく進行して、とても崇高だと思う。ツアーには、正確に覚えるにはやや長いサブタイトルがついている訳だけど、「それを言ってみて下さい」と客席にお茶目に投げてみたり「最後には私が」と言いながら、聖子ちゃんの曲名にかけた「天使のウインク」のフレーズでウインクしゃなりと決めて、曲に入るところなんて、素敵すぎて心が淡くなる。その後も、さいたまは、可憐Girls時代アニメロでSSAに立って以来という話になり「5年前にその会場に居た方いますか?」と挙手を募る。数人挙手した君たちは自らがガチであることを把握しているのだよねと私は同じ穴のムジナでありながら片隅で良識ぶったこと思っていると「あら長いお付き合いですね」とか言いながら笑顔で対応をする彩未ちゃん。すばらしい。でも驚いたのはその後。「でも、今日来てくれた方は5年後に手をあげられるんです。」と彩未ちゃんは言った。淀みなくそう言えることが、素晴らしかった。感謝であり、覚悟であり、やさしさ。温故知新のスーパーレディ。その名は武藤彩未さん。

アンコールで披露した新曲「桜ロマンス」はマイナー調で「青春でしょ 笑っちゃおう」という少しやさぐれの女の子。それもまた昭和の側面であることを十分に分かって彼女は歌っているとしか思えなかった。戻れなくなりそうだった。真っ赤なライトに染まる横顔。鋭さも持っている。新横浜では明菜をやるという。あまりの満足感と期待感に、帰り途に次のライブのチケットを買った。




西川口セットリスト】
彩りの夏(オリジナル)
女神のサジェスチョン(オリジナル)
MC
松田聖子メドレー
天使のウィンク青い珊瑚礁〜風は秋色〜チェリーブロッサム夏の扉
セシル
MC.彩未エクササイズ
C-Girl
素敵なラブリーボーイ
夏色のナンシー
スマイルフォーミー
風立ちぬ

EN
桜ロマンス(オリジナル)
彩りの夏(オリジナル)